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看護師の業務が忙しい中、子育てや家事などが増えると、自分の時間を作るのは難しいですよね。仕事も頑張りたいけど、プライベートも充実させたい。そんなワークライフバランスを保ちたい人におすすめなのが、訪問看護の仕事です。
今回は訪問看護の仕事内容や転職についてのポイントについて紹介します。訪問看護の仕事に興味がある看護師さんはぜひ参考にしてみてください。
訪問看護とは、在宅で過ごしている傷病や障害を抱えた方のもとへ看護師が訪問し、医療的なケアと生活のサポートを行うサービスです。利用者によって求められる内容が異なるため、看護師や准看護師はもちろん、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などリハビリの専門家も活躍しています。ケアマネジャーや医師とも連携を行い、利用者様が最後まで自分らしい生活を送れるように支援をします。なお、訪問看護ステーションの利用者は「要看護」と認められた人に限られています。 病院やクリニックに入院するのではなく、住み慣れた場所での療養を望んだ人を主治医と連携しながら援助していく仕事で、この先利用者が増加していくことが予想されています。
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訪問看護師は、病院やクリニックから往診するのではなく、所属する訪問看護ステーションから直接、利用者の住む場所に向かいます。そこで利用者の主治医の指示書に基づいた医療処置を行います。その内容は利用者によって変わりますが、カテーテルの交換やインシュリンの注射、点滴、血糖値の測定などが代表的なものとなります。
■健康状態の管理
体温はもちろん、血圧や脈拍、呼吸などを一通り調べて記録します。自宅ではどのように過ごしているのか、どんな動作に介助を要するのかを評価したうえで、今後も安全に生活できるように、動作の指導やサポートも行います。
■医療処置
主治医の指示に基づいて、点滴の管理やたんの吸引、褥瘡のケアなど必要な医療処置を行います。場合によっては、主治医やケアマネと連絡を取り合い、情報共有や適切なサービスの検討をします。
服薬管理も大切な業務の一つです。誤飲や飲み忘れを防ぐために訪問看護師が薬を管理したり、カレンダーを利用して自己管理できるようにしたり提案することもあります。持病のある場合は、その状態を確認する必要もあり、利用者に健康に関するアドバイスを行うことも重要です。利用者が終末期を迎えている場合は、痛みのコントロールや緩和などの処置も求められます。
病院の仕事と訪問看護ステーションの仕事は大きく異なります。院内で看護を行う病院と違い、訪問看護では基本的に利用者様の自宅で看護を行うことになります。病院のように機材は整っていない中、目と手の五感を使ったフィジカルアセスメント力が必要になります。利用者がより良い療養生活を送れるように援助することも、訪問看護師の職域に含まれます。具体的には食事や排泄、清潔な部屋の維持などをサポートします。
それぞれ生活している環境が違うので、利用者様に合わせたケアを行わないといけません。また基本的に個人で訪問することが多くなるため、急変時の対応や迅速な連携も求められます。
訪問看護師に求められるのが、「利用者とその家族のメンタルサポート」です。関わる人の負荷が大きい在宅療養は、利用者と家族が快適に療養を進めるためのメンタルケアが欠かせません。
ステーションによる給料の差はありますが、訪問看護師の平均年収は400万円前後です。訪問看護師に夜勤はなく、利用者様の緊急連絡に備えてオンコールの対応をとっているため、その分の手当てが出ることが多いです。
オンコールや時間外訪問の手当額もステーションによって変動します。中には訪問件数に応じて手当がつく訪問看護ステーションもあります。訪問看護師は、病院勤務と比較すると年齢による給料の差が少ないのも特徴です。
<メリット>
■夜勤が少ない仕事なのに高収入
訪問看護で働くメリットは、日勤のみの業務でも給料水準は良いので、転職後に収入が大幅に下がることも少ないです。報酬が高い要因は、訪問先であらゆることを一人で責任を持って行うということがほかの看護師の仕事と異なるためで、一定以上の経験や深い医療知識に基づいた行動が必要になります。
■ワークライフバランスがとりやすい
また、日勤のみが多いため毎日の生活リズムが崩れにくいことです。残業も少なく、土日休みのステーションが多いため、ワークライフバランスが充実しやすいと言われています。パート勤務では時間指定や半日など時間の融通がききやすく、自分にとって最適な働き方を選びやすいといえます。
■在宅医療のスキルが習得できる
業務面ではそれぞれの利用者様の症状や環境に合わせた看護支援を行うため、在宅医療のスキルを学べます。さらに在宅医療の需要高まると予想されるため、在宅医療スキルを養うことは看護師のキャリア選択の幅が広がるでしょう。個と個の深い信頼関係が築けることは、ほかでは得がたい訪問看護師ならではのやりがいになることでしょう。
<デメリット>
■急な対応が必要になることも
デメリットは、オンコール対応で急な訪問を行う可能性があることです。いつ利用者様やそのご家族から電話が来るのかわからず休日や夜でも対応する場合があります。ステーションによってオンコール体制の仕組みは違うので、気になる方は事前に確認する必要があります。
■一人で対応する仕事のため責任が必要
訪問看護は基本的に一人の業務であり、在宅医療に必要な知識や観察力が求められます。病院のように、その場ですぐに相談できる先輩や同僚もいません。利用者との相性が悪かったとき、療養環境に変化があったとき、誰にも話せず抱えこんでしまう可能性もあります。同様に、訪問看護を受ける側も慣れていないことが多いので、さまざまなズレが生じることもあるでしょう。 なにか問題が発生した場合はすぐに管理者へ連絡・相談ができるようなステーションを選ぶと安心です。
ここでは、訪問看護師になるためにどのようなスキルや資格が必要なのかを紹介します。
<必要なスキル>
■アセスメントスキル
訪問看護の現場では、在宅での生活を自分らしく過ごしたい本人や家族の希望に沿って、他職種と連携して適切なサービス・ケアを提供することが求められます。そのためには利用者様の状態を正確に評価し、変化がないかを日々チェックするフィジカルアセスメントスキルが欠かせません。
■コミュニケーションスキル
基本的に利用者との1対1の看護になるので、コミュニケーションがうまくとれないと、本人が希望していないケアを実施してしまいクレームや訪問拒否の原因になりかねません。また、在宅看護での不安や悩みを相談されることもあるため、利用者やその家族と深い関係を築いていく必要があります。利用者と主治医や、他職種との連携も必要になるので、コミュニケーション能力はとても大切です。
<必要な資格>
必要な資格は正看護師または准看護師の国家資格で、それ以外はありません。以前までは3〜5年ほど病棟勤務の経験を有することが推奨されていましたが、最近は経験を問わずに採用しているステーションも増加傾向にあります。
その背景として訪問看護ステーションの増加に伴う人材不足や、教育体制が整ってきていることがあげられます。もちろん経験豊富であれば喜ばれますが、研修が充実しているステーションであれば早い段階で訪問看護の分野に移っても心配する必要はないでしょう。
ご利用者やその家族にとって、決まった時間に我が家を訪れて診療を行い、ともに療養方針を立て、より良い環境のためにケアする看護師はやはり利用者の方にも大きな存在です。 このような深い関係を作れることは、今後の看護師の仕事や生きていく上で大きな財産になります。病院勤務とは異なり、その分訪問看護は基本的に一人で患者様と向き合うため、より強い責任感と臨機応変さが求められます。自分だけで抱え込まず、訪問看護ステーションのスタッフに報告・連絡・相談を積極的に行う姿勢も大切です。
持病がある人、痴呆症の症状が現れた人、大きな事故からの復帰を目指す人、人生の最期を自宅で迎えたい人…。住み慣れた家で療養生活を送る利用者は、実にさまざまです。多くの経験を積んだ看護師であっても、完璧にこなすことは難しいかもしれません。それでも、相手に合わせ、文献を読み、 症例を調べ、より良い環境づくりを実現するために邁進できる。そういう意識を持った看護師は、現場でも重宝されています。医療では「治療優先」の世界ですが、在宅は「利用者本位」の現場です。生活の看護に関心がある方は訪問看護師に向いているかもしれません。
訪問看護は新しい事業で、訪問看護師の絶対数がまだ少ないこともあり、事業所によっては利用者と所属する看護師の数のバランスが取れていないケースもあるようです。こういった職場に入ってしまうと、休みが思うように取れないといった弊害が生じてしまいます。また、大きな医療法人や企業が運営しているところは安心ですが、中には福利厚生や教育体制が整っていない場合もあります。実際に所属しないと見えない部分については、事前にコンサルタントに詳細な情報をお尋ねいただくのがいいでしょう。
訪問看護に転職する際の志望動機および自己PRでは、訪問看護に興味を持ったきっかけや今までどのような経験をしてきたのかを明確にアピールしましょう。またその経験が訪問看護でどのように活かせるのかを説明できるとわかりやすいです。
<志望動機例文>
■例文1:退院後の支援に関心がある
現在回復期病院に勤務していますが、退院後の患者様の様子や過ごし方まで看ることができないことに不安感がありました。訪問看護では病院生活では見えなかった退院後の生活を把握できたり、長期的に支援を行ったりすることが可能です。そのことから在宅医療の仕事に魅力を感じ、応募するきっかけとなりました。
■例文2:患者さんとじっくり向き合いたい
貴社の訪問看護ステーションに応募させていただいた理由は、利用者様とじっくり向き合って支援を行いたいと思ったからです。もともと急性期病院に勤務しておりましたが、入退院のペースが早いため患者様と長期的に接する機会がありませんでした。病院勤務時は、患者様の状態が急変する状況も多かったので、素早い対応を行ってきたスキルも活かせると考えています。
■例文3:地域の在宅ケアに貢献したい
総合病院に勤務していましたが、もともと地域に密着した在宅ケアの経験を積みたいと思っており、訪問看護師へ転職を考えていました。しかし子育てと仕事の両立が難しく、正社員として業務を行うことが困難だと判断したため、貴社の訪問看護師のパート募集を拝見し応募させていただきました。
今までの経験を活かして在宅医療の現場に貢献したいと思っています。
<自己PR例文>
■例文1:患者さんに寄り添った支援
今までの病院勤務の経験を通して、さまざまな患者様の悩みや訴えを傾聴して少しでも自分に何かできることがないか考え、実行してきました。その結果、患者様に感謝される機会が増え、ここに入院できてよかったと言われることもありました。この経験を活かして、在宅で困っている利用者様やご家族様の希望に寄り添いながらサポートをしていきたいと思っています。
■例文2:同僚・患者さんとのコミュニケーション
入院している患者様に何か異常があった際は、すぐ医師や看護師のリーダーに報告するよう迅速な対応を心がけています。またリハビリチームからの情報共有やご家族様にお話を伺うといったコミュニケーションも積極的に行うようにしています。訪問看護の経験はまだありませんが、業務では積極的なコミュニケーションが大切になると理解しています。患者様の気持ちに寄り添って今までの経験を活かし、いち早く貢献したいと考えています。
まだまだ一般的でない在宅療養と訪問看護師の関係ですが、いわゆる病院やクリニックで働いている現役の看護師の人にとっても「よくわからない」部分は多いのではないでしょうか?そこで、実際に訪問看護師として活躍中の方から、訪問看護師の仕事の良いところや戸惑ったところについて、率直な意見を聞いてきました。
<ポジティブな意見>
■医師との接点もあるので、安心しながら看護師の責任を全うできます
利用者の家を一人で訪れて、さまざまなケアを行うことが強調されがちな訪問看護師の仕事ですが、実際は主治医の指示に従って医療行為を行います。患者のことを一番よく知る主治医との密な連絡は、豊かで実りある療養生活を送る上で欠かせません。主治医も訪問看護師を信じて患者を託すわけですから、その期待にしっかり応える必要があります。また、病院が運営するステーションであれば、患者が入院していた際の病棟担当などと直接情報交換も可能です。
■ご家族の方が近くにいるため、利用者との意思疎通がしやすい
診療を行う場所が患者の生活の拠点ですから、同居する家族とは訪問の度に顔を合わすことになります。病院のように患者一人と相対するのではなく、患者を日々見ている家族の理解を得て物事を決めることは非常に大切です。時には家族を通じて、患者に主治医や看護師の療養方針を伝えるなど、互いにフォローし合える関係を作れるようにしましょう。
<ネガティブな意見>
■地域の情報を把握することも必要
患者が住み慣れた家で療養生活を送り、社会復帰を目指すことがほとんどです。リハビリや訓練のためにいっしょに近所を散歩することもあるかもしれません。また、長期にわたって同じ家を訪問することになりますから、周辺の環境にもしっかり目配りをする必要があります。ご近所との関係や馴染みのお店、交通事情など、訪問看護師が知っておくと療養に役立つ情報はたくさんあります。患者本人や家族の話をよく聞き、実際に周囲を巡って地域のことをインプットしていきましょう。
■患者のご自宅では、病院とは異なる気配りも
病院やクリニックは治療が専門ですから、さまざまな症例、患者に合わせた医療設備や器具が充実しています。自分以外のスタッフもいるので、緊急の場合も慌てずに処置することができます。訪問看護でも必要な器具は持っていきますが、想定外の事態が発生した場合は、患者の家にある家庭用の物で応急処置ができるようにしておきたいものです。
■時間が限られているため、忙しさを感じます
訪問看護師は、待っていれば次の外来患者が来る病院と違い、次の患者のところに約束の時間までに訪問する必要があります。このため、訪問数が多い日などは、どうしても時間に追われがちに…。一人ひとりと向き合うために選んだ仕事で、そのような状況が生じてしまうのは残念ですが、長いスパンで考えればたいていのことは解決できるのではないでしょうか。
訪問看護ステーションでは、バイタルチェックから点滴・血糖測定・インシュリン注射・褥瘡ケアなどの処置はもちろん、認知症ケアや終末期の看護対応など幅広い業務をこなす必要があります。 ただ、その分幅広い知識が得られると同時に他では得られない経験もできます。また、一人での活動が多い分、医師やご本人様とそのご家族、ステーション内の看護師や関係職種との深く密な連携が重視されています。
また、下記のいずれかの考えに当てはまる方には特におすすめの職場です。
1.在宅の看護・生活の看護に興味がある方
2.医師や多職種との協働にやりがいを感じられる方
3.地域貢献・密着の看護を重視される方
4.ターミナルケアに関心がある方
オンコール対応や個人での行動が多い分、病院勤務とは違った大変さがありますが、利用者様との距離が近く長期的にサポートできるというやりがいもあります。訪問看護の転職について悩んでいる方は本記事を参考に、自分に合った職場かどうか検討してみてください。