WORKPLACE
イベント会場やツアー、スポーツ競技場では、体調不良や突発のケガが発生することも少なくありません。 修学旅行や団体のツアー旅行などでも、環境の変化や体力の消耗などから、体調を崩す方もいらっしゃいます。参加者の持病悪化・急性疾患の発症・怪我などに備えて待機しているのがツアー/イベント看護師です。既往歴や体調など人によって異なるため、常に臨機応変な対応が求められます。本記事では、あまり知られていないツアー/イベント看護師の仕事について、様々な角度から特徴をまとめました。
ツアーやイベント時に、急病人の看護や怪我人の応急処置を行うのがツアー/イベント看護師です。ツアーでは、一般的な旅行企画の他、小中学生の修学旅行や自然教室に同行します。
召集されるツアーによって対象年齢は異なり、子供の場合は発達段階に応じて、起こりやすい怪我や疾患の知識が必要となります。低学年になるほど、食物アレルギーにも注意しなければなりません。一方、成人の旅行ツアーでは、既往歴を複数持っている方が参加しているケースもあり、多様な疾患の基礎知識が必要です。
イベント救護は、コンサート会場や競馬場、会社行事、大学の学園祭など、不定期で単発の仕事となります。対応は一次救護のみ。心臓マッサージ・AED・気道確保といった救命の看護処置は一通りできなければなりません。
一次救護の後、必要時には医療機関へ引き継ぎます。イベント開催者の助言・協力はありますが、全ての参加者に一人で対応できる看護診断能力が必要です。常に看護師が現場にいるわけではなく、設置された救護室で待機しておき、体調不良者や怪我人が出たときに依頼を受けます。
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ツアーやイベントに同行する看護師の主な仕事は、緊急時の対応と参加者の健康管理です。本来、旅行やイベントに参加している方は体調良好であるケースが多いため、緊急なアクシデントが生じない限り待機している時間がほとんどの場合も多いと言えます。
■同行内容について事前打ち合わせ
日程開始前に事前打ち合わせを行います。電話打ち合わせもありますが、先方に希望があれば、学校やイベント主催者のもとに出向く場合も。事前に救急ボックスが送られてくるか、イベント主催者で用意するか、確認が必要です。
■参加者の健康管理
持病のある方がツアーに参加される場合は、主催者側と事前に対応方法を確認し、当日の健康状態を見守ります。体調が悪化した場合などは、必要に応じて近隣の医療機関へ付き添い医師への説明を行うこともあります。
■緊急時の一次救護
万が一、会場内で急病人や怪我人が出た場合には、救急バッグを持参し、症状に応じて一次救護を行います。
例えば、夏のイベント会場なら熱中症や過換気症候群、スポーツ会場なら骨折に捻挫、花火会場ならやけど、旅行中なら食中毒などが生じやすい症例です。看護師が行うのは、バイタルサイン測定・全身状態の観察・一次救護までです。会場スタッフとも相談し、すぐに救急車を呼ぶべきか、しばらく様子を見るかを判断します。
ツアーやイベントは不定期で開催されるため、毎月仕事を受けられる保証はありません。日給制であることが多く、地域によって異なりますが10,000~14,000円程度が相場です。医療行為がない仕事としては高めとも言われています。求人としても人気のため、ツアー/イベント看護師だけで年収を確保するのは難しいでしょう。
ツアーやイベント、旅行に医師は同行しないケースがほとんどです。しかし看護師の裁量は救護までと限定されており、医療行為は行えません。会社から渡されるマニュアルを確認し、どこまで看護・処置ができるか、事前確認する必要があります。
<メリット>
■体力的負担が少ない
急病人や怪我人がいなければ、勤務時間のほとんどが待機に当たります。そのため肉体的には比較的楽だと言えるでしょう。
■イベントを見ることができる
交通費や宿泊代、イベントの参加費は求人側持ちになります。スポーツイベントやコンサートの仕事では、主催者から「催しを見ていていい」と言われる場合もあります。
また、病院勤務では出会わないような様々な職種の人や普段見る機会がないイベントを覗ける点もメリットです。
<デメリット>
■原則一人で対応が必要
ツアー/イベントに配置される看護師は、基本的に一人のみです。医師がいないため、けがや急病への対応は自分の判断で行わなければなりません。
会場内でどんな急変が起こるのかすべて予測するのは難しいため、どういった疾患にも対応できるよう、各科の知識を網羅的に知っておく必要があります。
■夜間の対応が必要なことも
旅行添乗の場合は、急病人が出ると夜中でも対応しなければなりません。数日の短期の仕事が多いとはいえ、勤務時間に区切りがないのはデメリットの一つと言えそうです。
■求人が見つけにくい
イベントや添乗の仕事は非公開求人の場合が多く、なりたいと思っても自分で探すのが難しいことがあります。また、短期の仕事がメインで、旅行シーズン以外は求人数も減るため安定して求人を見つけたい方は人材サービスを活用しましょう。
急変対応・急病の対応を行う場面が想定されるため、多くは病棟での臨床経験が必要です。救急外来・ICUの経験があれば、採用率はアップするでしょう。具体的なスキルは以下の通りです。
<必要なスキル>
■一次救護の知識と経験
ツアーやイベントには、「もしも」のために看護師が配置されています。一次救命処置の知識と経験は欠かせません。同行するツアー/イベントや状況に応じて、内科の一般的な傷病の知識と、熱中症・脱水・発熱への対処スキルも必要です。スポーツイベントでは整形外科疾患の知識と看護経験があるとさらに良いでしょう。
■子どもとのコミュニケーションスキル
修学旅行や自然教室など、子どもを対象としたイベント添乗は、小児科経験があると頼りにされます。また、子どもとスムーズなコミュニケーションができるかどうかも大切なポイントです。
<必要な資格>
看護師の資格があれば十分です。日本旅行医学会が発行している民間資格もありますが、採用の条件には定められていません。
イベントや旅行では集まる職種も年齢層も様々で、急変による緊急対応に苦慮する場面も発生します。そのため、環境の変化を楽しめる、順応性のあるタイプが向いています。
また、旅行先の移動では途中で気温が変化することも。当日になって体調を崩さないように、日頃からしっかりと体調管理できる方が良いでしょう。
ツアー/イベント看護師は主に派遣看護師として登録し、募集があったときに自ら手を挙げる求人がほとんどです。医療行為が少なく、業務内容が多忙ではないため人気があります。すぐに埋まる可能性が高いため、他の応募者と差別化を図るには、熱意や一次救命処置の経験を分かりやすく伝えることが必要です。イベント専門の救護会社への応募も同様です。
<志望動機例文>
■例文1:旅を楽しむ人の助けになりたい
私自身、旅行が大好きです。旅先で思わぬ健康トラブルがあると、参加者さんは不安になると思います。基礎疾患がある方、アレルギーをお持ちの方でも安心して旅行を楽しんでいただくために、自分の内科での経験を役立てたいと思い、応募しました。内科病棟の勤務経験があり、低血糖など内科系の急変対応は一通り可能です。
■例文2:スポーツなどのイベント救護をしたい
スポーツに怪我は付き物です。そのような場面でも早い段階で看護師が対応できれば、苦痛や痛みを軽減できるのではないかと思います。今までの整形外科での経験が役に立つのではないかと思い志望しました。
■例文3:子供の安全な思い出作りをサポートしたい
小児科の勤務経験があります。宿泊を伴うようなイベントでは、親と離れたことで不安になり、体調を崩す子供もいます。そのような子供のサポートを行うことで、本人にも先生にも安心してイベントを楽しんでもらいたいと考え、応募しました。
<自己PR例文>
■例文1:救急病院で勤務した経験を活かしたい
救急外来病院で働いた経験があり、看護師として一次救命処置に当たっていました。ツアーやイベントは臨機応変な対応が求められるため、これまで培った現場臨床が活かせると考え、志望しました。
■例文2:急性期看護の経験に網羅性がある
総合病院の救急外来で勤務していたため、蜂に刺されたときのアナフィラキシ―や喘息・低血糖など一通りの対応ができます。
イベントやツアー同行など、イベントごとがお好きな方におすすめのお仕事です。大半のお仕事は単発・スポットの業務なので、自分のタイミングで無理なくお仕事をすることができます。 最小1名のみと、少人数での業務になりますが、比較的軽い症状の方が多いことと、万一の際は医療機関に相談ができるため、安心して勤務することが可能です。求人がそれほど多いわけではないため、希少価値が高く人気のお仕事です。
下記のいずれかの考えに当てはまる方には特におすすめの職場です。
1.コンサートホールやスポーツ競技場のイベントのお仕事に興味がある方
2.空いている時間を有効活用したい方
3.単発・短期のお仕事を探している方
4.老若男女、幅広い世代への看護に興味がある方
ツアー/イベント看護師は、参加者の急病・怪我など病態に合わせて対応するため、各科一通りの知識と傷病の手当てが求められます。緊迫する現場で、自らの判断のもと適切な処置を行わなければならず、責任が大きいある仕事と言えるでしょう。一方で、旅行やイベントなど、他にはない経験ができるのもツアー/イベント看護師の醍醐味です。